Bun Him!!!
Text by Reiko NAGASE SMITH(協力:アイランドツアー)
マッカ・ダイアモンドが、自身のヒット曲を題材に書き下ろした小説が、9月末に発売された。タイトルはずばり、『Bun Him!!!(浮気しちゃえ)』。人気女性DJによる初のダンスホール小説で、話題に。
小説の登場人物は5人。下町出身のヒロイン、サンドラは、裕福な男性ラリーと結婚し、キングストンのアップタウンに暮らしている。A woman we name, so we born lucky. 下町の女の子が夢見る勝ち組ライフ。マテリアル的には何不自由なく満足に暮らしてるけど、夜の生活にはちと不満。Mek pure noise and pretend. ま、そこは、大げさに声をだして、フリをすることでフォロー、フォロー。知らぬが仏。知らないことで、痛い思いはしないもの、とうそぶくサンドラ。この小説、ベッド・シーンもやたら多いです。
アップタウンのアパートに住んで、いい車に乗るMoney O——! サンドラのまわりには、バッド・マインドの目と口が絶えることがない。ベギ男にベギギャル。When mi go shopping mi nuh look pon di price. サンドラが、値段も確かめずにモノを買い求めるところを見ると、同じ下町出身のティファニーは、やっぱりどうしたって羨ましい。ティファニーは、サンドラの友達。Nutten much. パッとせず、Same ole same ole, yuh nuh know how dat go. 同じ毎日のくりかえしで生きてる。ティファニーのボーイ・フレンド、リッキーはタクシー・ドライバーで、日銭生活。しかもこの男、暴力の傾向がある。Him nuh have nuh right fi put him hand pon mi. 彼女に手をあげる理由もないのに。
Whappen? Yuh ready fi gimme some a di goodness? ジャマイカの男は、こんな誘い方をする。ティファニーは、サンドラの夫ラリーと寝てしまう。Anuh nutten really. 小説の中では女の方も、こんな返事。Woman sneaking, but man stay so, too. 女もこそこそしてるけど、男の方もね。
その現場をあろうことか、リッキーが見つける。Pack up yuh clothes an lef! 荷物まとめて出てけー。で、すめばよかったが。
一方サンドラは、幼なじみのカルヴィンと再会。カルヴィンはギャングスタで、デポーティー。Man a real top shotta. とびきりのガンマンだ。実はこのカルヴィンが、サンドラの初めての男。とっくの昔に消えた火が燃えた。One man caan satisfy her... She need more hood for the fire. 彼女は一人の男じゃ満足しない。燃える火に、フードをかぶせろ。喧嘩シーンも激しいのなんのって。リヴィング・デンジャラスリー。
この先、小説のストーリーはさらにDeadシリアス。テレフォン・ティングにジャケット、マーダラあり、本格的パサパサ・ストーリーに展開していきます。Ahhhh, What a mix up mix up!
アサシン、T.O.K.、マヴァドなど、ダンスホールのチューンがそのまま小説に登場。ダンスの現場シーンもあり。Dance will never die.
地名も実名で登場し、アサイラムやホット・マンデー、ボーグル追悼ダンスなどもリアルな描写。バッド・ワード連発な、いかにもキングストンなライフ・スタイルを描いていて面白い。会話にパトワが多くて、それがダンスホールが聞こえてくるようで、さすが現役DJが書いた小説。
「Bun Him!!!」オリジナル・チューンのようなコミカルな内容ではなくて、考えさせられる男と女のダブル・トラブル物語。True Bun.