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296    ARTISTS    C.I.C

Click Ice Cream
C.I.C
 
Text by Naohiro Moro / Photo by Shin Yamaguchi
 

6者6様のMCスタイルによる変幻自在なパフォーマンスで湘南エリアを中心にアンダーグラウンドな活動を続けているヒップホップ集団、C.I.Cが11/7、遂にファースト・アルバム『Click Ice Cream』をリリース。湘南発ならではの柔軟さ、懐の深さが滲み出た作品だ。
 
 “湘南サウンド”といえば、世間的には、サザンか、古くは加山雄三辺りを連想してしまう響きである。確かにそれらは、誰からも愛され、長く地元の人々にとっての誇りである部分だ。しかし、どの街、どの地域もきっとそうである様に、今を生きる若い連中が求める現在進行形の音楽シーンが、湘南にもある。相模湾に面した海沿いのこの土地では、ジャンルの垣根を取っ払ったボーダーレスなオープン・マインドなノリが特徴と言えるかも知れない。この稿で紹介する6MC+1DJのヒップホップ集団「C.I.C(Click Ice Cream)」も、そうした土壌から生まれ出たグループだ。
 
 C.I.Cは、長い間、藤沢でキープされていたヒップホップ/レゲエのパーティ「Non-Fiction」にその起源を持つ。開催されていたクラブ「Queens」の閉鎖と共に、現在は休止状態にあるが、アンダーグラウンド時代の湘南乃風のメンバー、特にHun-Kunなどは腕を磨いた現場である。そのパーティの中心人物だったMista Sharが、湘南ヒップホップを更に大きく押し上げるべく、シーンの精鋭を集めて活動を開始したのが始まりである。
 
 メンバーは、トラック制作やレコーディング/エンジニアリングも手掛けるMista Shar、たたみ掛ける様な高速ライミングで圧倒するAlcione ST、最もイルでフリーキーなフロウの使い手のT-Diddy a.k.a TKC、多くの客演経験を持つ重低音ラップの本格派Akeey、シングジェイ的なフロウも自由に駆使するRunboo、唯一ラガMCスタイルのD.Y。この6MCにDJ Naoが加わった7人がメインのメンバーで、広い意味では、先の「Non-Fiction」のクルーらも含め、膨大な人数がC.I.Cファミリーに加えられ、その中には、ダンスホール・バンド、Stoned Rockersも含まれるという。
 
 結成は2000年頃までに遡るが、徐々に活動を開始したのは2004年。この頃からメンバーのソロでのフィーチャリングが増え始める。参加した主なアーティストは、ラッパ我リヤ、Moomin、DJ Quietstorm、Bamiuda、山嵐、Buzzer Beatsなど。そうした水面下での侵攻計画と、年間50本程度のライヴ活動を経て、音源制作に乗り出し、ついに完成したのが、ファースト・アルバムである本作『Click Ice Cream』なのである。
 
 気になるそのアルバムの内容と言えば、『Riddim』読者的に馴染みがあるとすればPushimの「Hey Boy」のバック・トラックの制作を手掛けたBuzzer Beatsが多くのビートを提供し、プロデュースも手掛けている。スリリングな6本マイクのリレーで構成される楽曲を基本に、ラッパ我リヤ、Uzi、Mineshin Hold、Firm 134などのヒップホップ勢に加え、Ryo the Skywalkerもゲストとして参加。全てがアンダーグラウンドの手作り作品とは思えない内容とクォリティを備えている。インディーズである者の特権であり、武器でもある「自由さ」で、時代の趨勢など意に介さず、ハードコアなラップで直球勝負する姿は痛快であるとも言える。
 
 ここで、こうした湘南の音楽シーンに大きく寄与している存在として名前を挙げておきたいのが、以前の本誌のMoomin、Tanco対談の稿でも、軽く名前の出た、藤沢善行のライヴハウス兼スタジオの「Z」の存在である。建物の地下にはなぜかランページを備え、1階がバー・スペースとライヴハウス、2階にはレコーディング・スタジオのあるこの施設では、例えばFire Ballが新曲のためのプリ・プロを行ってる下で、Nanjaman、Papa U-Geeがライヴのリハーサルをやっていて、更にC.I.Cが麻雀をしている、などといった状態が日常的であったりする。金のないミュージシャンをいろいろな部分でサポートし、交流/情報交換の場として機能しているこの施設の存在は大きい。
 
 そもそも湘南からは、実は多くのアーティストが輩出されている。ロック畑で言うなら湘南が生んだミクスチャー・ロックの雄、山嵐。レゲエでいうなら、その名前に「湘南」を冠した湘南乃風は分かりやすいところだし、Home Grown、Moomin、Nanjaman、Rickey-Gらが挙げられる。ジャンル間の交流も深く、数年前の話になるが、山嵐が自分たちの地方ライヴに、湘南サウンド・システムの代名詞Murder Oneを帯同させて、ライヴ前に100%ロックの観衆に向けてレゲエのサウンド・プレイをやってみたり、Home Grownのライヴに感銘したパンク・バンドが、ダンスホール・バンドへと変遷を重ねた姿が、現在のStoned Rockersであったり、この夏開催された山嵐主催のイヴェント『湘南音祭』(C.I.Cも出演)では、Mongol 800、Orange Range、B-Dash、Dragon Ash、Rize、土屋アンナといった面子と一緒に、普通にHome G、Moomin、H-Man、Stoned Rockers、湘南乃風らが並ぶといった様相。この風通しのいい空気感が生み出したミクスチャー感覚の土壌の形成に大きく関わり、自分たちもそこで培養され、今、ようやくお披露目となる連中。それが、この6MC+1DJのヒップホップ集団「C.I.C」なのである。
 
 音楽ビジネスに限らず、何事つけても商業主義でなくてはいけない様な風潮な今の時代、無鉄砲な奴にこそ共感してしまう。そのピュアなスピリットでシーンに風穴を開けるぐらいの活躍を期待している。
 
"Click Ice Cream"
C.I.C

[C.I.C Production / Daiki / CICR-1] 

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