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294    ARTISTS    LLOYD BARNES    WACKIE'S

The Charm Of Wackie's
 
Text by Takeshi Fujikawa
 

 
NYを拠点に独自のレゲエ・ミュージックを産み出しているワッキーズの80年代半ばの雰囲気を伝える貴重なドキュメント『BULLWACKIE〜ロイド・バーンズとワッキーズの輝き』がDVD化された。音楽評論家、藤川毅氏がワッキーズ、そして本作の魅力を語る。
 
ボクの記憶違いでなければ、この作品は、英国の放送局で放映されるために八十年代半ばに制作されたものだ。今回のDVD化で初めて気づいたのだが、プロデューサーのスペシャル・サンクスにレイ・チェディの名前がある。ロンドンはポートベロの有名レコード店オネスト・ジョンズのレイだ。ボクの記憶も間違いではなさそうだ。
 
この作品は、ワッキーズおよびニューヨークのレゲエ・シーンの紹介的な側面を持ちながらも、ロイド・バーンズ=ブルワッキーその人に焦点を当てたものだ。このDVDでワッキーズを英国に紹介するにあたり大きな役割を果たしているのが、英国で「Good Thing Going」をヒットさせたシュガー・マイノットだ。ワッキーズと縁が深く、英国でヒットを持つシュガーなしにこの企画は存在しなかっただろう。このDVDでは、ロイド自身の証言を通じてニューヨークの地で音楽制作を行うようになった経緯や音楽観が披瀝され、ロイドという一人のジャマイカ人を通じてニューヨークのレゲエだけではなく、レゲエの歴史をも垣間見られると言っても大袈裟ではない。
 
一九六二年に独立したジャマイカ。独立気分は高まったが生活は厳しかった。独立前は英領だったこともあり、多くのジャマイカ人が英国に渡り、英国への入国が厳しくなるとアメリカやカナダへ移る人も多かった。ロイドもその一人。ロイド自身、勉強のため渡米したにもかかわらず、一時帰国した際の政情不安なジャマイカを嫌い、アメリカでの生活を選ぶ。米国初期はディスコ形式で音楽を流していたとDVD内で語っているが、ジャマイカ出身でヒップホップDJの開祖クール・ハークもジャマイカからアメリカに出てきてジャマイカのサウンドシステムに倣ってレコードを回していたというから、ロイドと同様だ。レコードを回すことに特化し続け、新たな文化を生み出したハークに対し、ジャマイカでも音楽ビジネスの経験を持っていたロイドは、レコードを回すだけでは飽きたらず、音楽制作の道へと歩み出す。
 
ジャマイカ人が多数渡った英国と米国におけるレゲエ受容の差異……などと始めると一論文になってしまうが、共通しているのは、「ジャマイカ至上主義」だ。ジャマイカ産のレゲエが一番、英国や米国のレゲエはその次。英米のアーティスト達にとっては、どんなに頑張っても二番煎じのレッテルが貼られる。しかし、だからこそジャマイカ以上にジャマイカらしさを追求した作品もあるし、一方で創意工夫がなされジャマイカ産の作品とは一線を画す素晴らしい作品も生み出された。ワッキーズやUKのレゲエをより高く評価したのが、英国以外のヨーロッパやここ日本のレゲエ・ファンであったのは、けっして偶然ではない。これらの国では、ジャマイカのジャメイカンと、英国や米国のジャメイカンとを区別する必要がなく、色眼鏡で見る必然性がなかったからだ。
 
米国や英国のレゲエ・シーンは、ジャマイカを離れたアーティストやジャマイカを拠点としながらも国際的に活動するアーティスト達の異郷におけるホームとして機能したと同時に、在英米の若い世代のレゲエ・アーティスト育成にも大きな役割を果たした。ワッキーズも、交流拠点であり、学校でもあったわけだ。
 
 
 
マックス・ロメオ、リー・ペリー、ジャッキー・ミットゥ、クライヴ・ハント、シュガー・マイノット、ローン・レンジャー、ホレス・アンディ、ミルトン・ヘンリー……多くのジャマイカで実績のあるアーティスト達がワッキーズで交わり、素晴らしい作品を残した。一方、ワッキーズ・スクールは多くのニューヨークの才能を発掘した。DVDに登場のニューヨーク勢に簡単に触れてみよう。スタジオの場面でクライヴ・ハントらと映るフェビアン・クックやラス・メネリック。来日歴のあるマキシン・ミラー(マキシンの弟、クージーも来日したことがあったことを思い出す)。クラブでラス・クリフトンの歌唱中、ジェリー・ジョンソンが突然サックスを吹き出すのも笑える。ナーキのバックでも有名なジェリー・ハリスがDVD中で歌うその曲は同名アルバムも出ていた。それはワッキーズからのリリースではなかったが、彼は長年ワッキーズを支えた功労者の一人だ。アイトピアでドラムをたたくのは前出のフェビアンで、トニー・アレンがベースを弾いている。DJが少ないワッキーズの中で抜群の存在感を持っているのが来日歴もあり『Mr. Excitement』をワッキーズより出したマイキー・ジャレット……なんて風にあげていくだけで楽しくなってくる。
 
僕が二十数年前に撮影されたワッキーズのドキュメンタリーを観て、自分の友人に再会するかのように楽しめるのは、このワッキーズというレーベルにソニー落合という日本人が関わっていたからだ。落合を通じてワッキーズ音源は日本のレコード会社からもリリースされたし、八十年代半ばにはいると、レゲエ・サンスプラッシュ・ジャパンとして始まったレゲエ・ジャパンスプラッシュの1回目にワッキーズ・リズムフォースというバンドが帯同し、レゲエ・マガジンが創刊されると落合や当時ニューヨークに拠点を移しつつあったナーキ(山口直樹)の手になる原稿や情報によりワッキーズやニューヨークのレゲエ情報が徐々に増えたのだった。八四年のシュガー・マイノットの来日以降、格段に増えた日本でのレゲエ公演において、落合が絡んだジャパンスプラッシュ・ウィンター・コレクション等のイベントを通じ、ニューヨークのレゲエ・シーンは、日本の熱心なレゲエ・ファンの耳に届き、強い印象を残した。
 
だからこそ、このDVDに懐かしさを覚えるのだ。四十男の感傷だけではなく、ニューヨークのレゲエ・シーンを支えたワッキーズの歴史の一断面をこうして音と映像で振り返ることができるのは素直に嬉しい。ブルワッキーの最初期のレーベル名がヴァーサタイルだったように、このDVDで聴ける音はルーツからラヴァーズまでまさにヴァーサタイルだ。八十年代半ばですら入手しやすいものではなかったワッキーズの音源がベイシック・チャネルのおかげで容易に聴けるようになった現在、感傷組も新発見組も今一度ワッキーズの歴史を映像で振り返り、ワッキーズの音に身を任せるのって悪くない楽しみ方だ。
 
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『BULLWACKIE ロイド・バーンズとワッキーズの輝き』
[Nowonmedia / NODJ-00007]



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