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H-Man
諸法無我
 
Interview by Norie Okabe / Photo by Masataka Ishida
 

一言一句を漏れなく心に届かせる純日本語DeeJay、H-ManがHome GrownのTancoとKon“MPC”Ken、Wadada(Takahiro & Nodatin)をプロデューサーに迎えた5thアルバム『諸法無我』(しょほうむが)をリリース。ここでは、収録曲の内容はもちろん、“神”という壮大なテーマに取り組むこととなった経緯、そこにまつわる心境・生活の変化に至るまで、たっぷり語ってもらった。
 
●仏教について考えるようになったのは、どんなきっかけで?
H-Man(以下H):高橋信次先生の本を読んでからですね。3年前くらいに「般若心経の歌をやらないか?」って話をもらったときがあって『原説般若心経』っていうのを読んでみたのが最初かな。結局、その歌の話は断ったんだけど、それから高橋信次先生の本は、ずっと読んでる。そこで教えを学んでるというかね。神のことは昔から考えてたんですけど、高橋信次先生は「疑って、疑って、疑いきれなくなったら信じてください」って言うわけですよ。そういう宗教家は今までいないからさ。すごく頷ける部分があるんだよね。
 
●今回のアルバム・タイトル『諸法無我』は、いわゆる仏教の言葉ですけど、そこにあるテーマというのは?
H:トータル・テーマは“神”。といっても、神っていうのは当然“あの世”のものじゃないですか。それでいて言葉っていうのは“この世”のものでしょ? だから、宗教的に一言で言っちゃうと“神”になるんだけど、実は“神”ってものはイコール“愛”だったり“光”だったり“法則”だったりするんだよね。『諸法無我』の“諸法”も“神”でも“愛”でも“光”であってもいいというか。たとえばリリックを書くときに「神とはこういうものです」ってそのまま言ってもおもしろくないじゃない? それをいかにスムーズにリリックにするかっていうのがエンターテインメントだと思うし、そこをやってみたという感じだよね。
 
●前から“神”のことは考えてたということですけど、今回のタイミングであえて、そのテーマを選んだのは何か特別な理由でも?
H:悪いことをやめたから(笑)。神のことを歌おうって思った時期は前にもあったけど、そこまで表現できなかったっていうのは、高橋信次先生がいうところの正しい生活を実践してなかったっていうか、自分の悪い部分、煩悩的なところを捨て切れてなかったからなんだよね。実践してない人の言葉って嘘くさいでしょ? でも、今回パッと捨て切れたから。
 
●そんなにスパッと捨てきれたのは、またなぜ? 
H:いかに生きるかってことは、ずっと考え続けていたんですけど、今まで俺は、それをレゲエに求めていたんだよね。でも最近、レゲエがゴールじゃないって思ってさ。レゲエで食えない時代にバイトしてたわけだけど、それって本当はやりたい仕事じゃないし、適当にやろうと思えばやっちゃえるわけじゃない? でもバイトの比重が多い中で30分DeeJayやるっていう行為だけ格好つけるのは難しいよね。だから、レゲエやるために一生懸命バイトするってことが真理だと思ってたし。だけど、食えるようになったことで、その拠り所がなくなっちゃったんだよね。週30分しか働かないっていう、人も羨むような楽な状況。ずっとボケーっとしててもいいわけじゃん(笑)。だけど、セックスもそうだし、それって肉体的に気持ちいいってことだけで魂が震えるとかじゃないでしょ。本当に感動するってことは、そういうことじゃないわけじゃない? 人間っていうのは成長していきたいわけだからさ、そういう意味で、いわゆる悪い遊び(笑)をやめて、生活を改めるってことをしたんだけど、そしたら、それが結構面白いんだよね(笑)。
 
●その生活が制作作業に影響した部分はありますか?
H:リリックの作り方がまず違う。前までは、いっぱい吸って車で夜中出かけて、高速飛ばして爆音で聴いて、それで書くってことをしてた。レゲエって音楽は、それが正解だと思ってたしね。でも今回は午前中起きて、ハイキングコース歩いて、行った先の喫茶店に入り、そこでリリックを書いて、夕方帰ってくるみたいな(笑)。
 
●(笑)すごい! かなりの変わり様ですね。
H:そう(笑)。それでさ、またリリックがすごくいっぱい書けるんだよね。どんどん、ひらめいちゃう。なもんで、リリック作りもかなり早く終わっちゃって、レコーディングも1日3曲ずつ 録って4日で終わり。

●制作期間が1ヶ月半だったとか。
H:今までで一番早かったね。“悟り”って自分の心をコントロールすることらしいんですけど、何かひらめくっていうのは、まさにそのコントロールしてる状況じゃない? 人間、そこに持っていけるっていうのが気持ちいいんだなって、自分の中でも衝撃だったよね。
 
●では、その内容についてなんですけど、今回もファウンデーション(“Chase Vampire”“Cherry Oh Baby”“Full Up”など)を中心にしたトラック構成でありつつ、2曲ヒップホップものがありますよね。それが日本語ラップ黎明期を思い出すような、なんともアブナイ雰囲気というか、またいつもと違うH-Manさんが出てて最高にかっこいいな、と。
H:太文字で書いといてください(笑)。自分じゃ言えないから。
 
●(笑)いわゆる“今風”っていうものとは違うわけじゃないですか。
H:うん。これも誰か言ってくれればいいんだけど、自分で言っちゃうけど(笑)。今の日本の音楽シーンで、ここまで日本語で歌ってる人っていないんだよね。言ってみたら演歌だけだよ。ほかはみんな、サビとか肝心なとこが英語になってたりしてるわけじゃん。「H-Manの歌は言ってることがよく分かる」って言われるけど、実はそういうことだと思うよ。正直それは、俺が英語を喋れないから日本語でやってるってことではあるんだけどね。でも、言ってることがよくわかる分、つまらない ことを言えないっていう難しさもあるからさ。そこは気付いてほしい部分だったりするよね。

●「愛と恋」もまた異色のトラック。ここでは“歌って”ますが。
H:オールディーズみたいなトラックをTancoさんに頼んで、もともと歌の部分は誰かに歌ってもらおうと思ってたんですよ。だけど、歌ってる人が馬鹿な設定だから頼むには悪いなって(笑)。歌ができあがった時点で一人で笑っちゃって、可笑しい歌だなって思ったりしてたからね。でも実際、できたら結構マジメな歌になっちゃって、自分でも困っちゃったんだけど(笑)。こういうドゥーワップっていうのは、中学時代にすごい好きだったんですよ。でも、実際歌が歌えないわけだから、コーラス・グループなんて作れなかったわけじゃない? 今回はその夢が叶ったっていう感じですね。
 

 
●Moominさんのコーラスも素敵ですよね。「スキスキ♪」ってとこが特に。
H:そこは、Moomin、嫌がってたね(笑)。でも、Tancoさんと2人で「いや、そこは絶対“スキスキ”じゃなきゃだめなんだ。それがおもしろいんだ」って言って、やってもらったんだけど(笑)
 
●コンビネーションに関しては、Jr.Deeと去年の「横浜レゲエ祭」の掛け合いを再現ということで。
H:サビの部分だけ再現ってことだけどね。あのとき、実は何を歌うか全く決めてなかったの。トラックだけ決めて、あとはその場でやろう、と。それを断らないのはあいつしかいないだろうなって思ったんだけど、「やる」って言ってくれたんで。面白かったですね。昔、小さいハコでやってたラバダブみたいな形を、3万人の前でやるっていう。
 
●ベテランDeeJayのことをトピックに選んだのは?
H:リリックの中でも言ってるけど、今、若い子たちが「ラバダブです」って言ってやってるのは、ただ順番に歌うっていう発表会みたいなもんでしょ? でも、ラバダブってもっと駆け引きってものがあるわけで、それが本当にできるのは何人くらいかなって考えたときに、10人いないんだよね。伝統芸になっちゃってるっていうかさ。Jr.Deeはラバダブが一番できる奴だし、一緒にそういう歌をやりたいっていうのは、あったよね。
 
●そのほか、教育、宗教などなど、社会風刺ネタも多々ありますが。
H:社会派じゃなくてもこれぐらい思うんだってところだよ。ニュース観りゃ、「馬鹿だな、この人は」って感じる。そのレヴェルだと思うよ。過激だって言われりゃ過激なんだろうけど、みんな普通に思ってることじゃない? ただそれを発表するか発表しないかってことで、俺はこういう職業で発表する場があるから、できるっちゃあできるっていうか。それでついつい言っちゃうんだけど……ってところですかね。
 
●では、最後に読者へのメッセージなどを。
H:アルバムでは、今のレゲエ・シーンに文句も言ってるけど、客がいるってことがすごい嬉しいし。俺たちがやり始めたころは客がいなかったわけだからね。シーンが大きくなったお陰で食えてるわけだから感謝してます。あと、やっぱり高橋信次先生の本をみんなに読んでほしいなって思うんだよね。神理を書いてる本があるのは日本だけだし、そこに生まれてるっていうのはすごいことだと思うから。それに気付いてくれたらいいかな、と思いますね。
 



H-MAN ALBUM DISCOGRAPHY

 1st Album "レゲエ馬鹿道場"
[Overheat / OVE-0085](2002.7.17.)


 2nd Album "馬鹿話"
[Overheat / OVE-0090](2004.2.20.)


 3rd Album "レゲエ馬鹿三昧"
[Overheat / OVE-0092](2005.5.25.)


 4th Album "チャンスは今日今夜"
[Overheat / OVE-0097](2006.6.23.)


 5th Album "諸法無我"
[Overheat / OVE-0101](2007.7.11. Release)


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