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Stranger Cole
 
Interview by Masaya Hayashi / Photo Masataka Ishida
 

映画『Ruffn' Tuff』の、あの印象的なシーンですっかり魅了されてしまった人も多いだろうジャマイカン・スカ〜ロック・ステディの最後の巨人、ストレンジャー・コールがもうすぐやってくる。初めての来日公演という事もあり気合い充分のストレンジャーにインタビューした。
 
本名Wilburn Theodore Cole、人は彼をストレンジャー・コールと呼ぶ。このストレンジャーという名前は幼い頃からのニック・ネームで、両親や兄弟の誰とも似ていない彼を家族はストレンジャーと呼んだ。「父親はギタリスト、伯父さんもギタリストのギルバート・コール、あのアーネスト・ラングリンの同僚だ。兄弟はデューク・リードの看板セレクター、息子はグラミー・アワードを持つジャマイカでは若手一番の人気ドラマー、娘はマイティ・ダイアモンズのドナルド“タビー”ショーを旦那に持つ。長男は飛行機事故で死んでしまったけど、彼も良いDJだったよ」と語るストレンジャー、純然たる音楽一家である。
 
「初めての録音は?」と質問したところ、もう覚えてないようであったが、私の調査によると初めてリリースされたレコードはソロではなくデュエットで、ウィルボーン・コール&ロイ名義の「Come And Hold My Hand」。ローランド・アルフォンソがバックを務めフェデラル・レコーディング・スタジオで録音されたそれは、トレジャー・アイル以前のデューク・リードのプロダクションよりリリースされている。そして1962年はジャマイカがイギリスの植民地支配から独立した記念すべき年だが、この年にストレンジャーはそのキャリア最大のヒットとなる「Rough & Tough」と「When You Call My Name」をリリースする。今回はその当時の事を語って貰いたいとリクエストすると、「まず何を話そうか?」といつものホット・ビアをテーブルに置き、静かに話し始めた。
 
Stranger Cole:そうだな、私がまだデンハム・タウンの学生時代、卒業式の時に先生から「コール、君は歌がうまいので何かみんなに歌ってみせて下さい」と言われたのでジャッキー・エドワーズの「Tell Me Darling」を歌ったんだ。そうしたらみんな喜んでくれて、「もう一曲歌ってみて」と言われ、やはりジャッキーの「I Know」を歌った。その時、先生からアイスクリームを貰ったんだ。しかも両手にダブル・アイス・クリームだ! これが初めて貰ったシンガーとしてのギャランティだよ。それで本物の歌手になりたくなって曲を書き始めたんだ、毎日ね。兄弟がデューク・リードのセレクターだったからいつかは紹介して貰えると思って日に5曲も書いた事もあったな。そのうち自分の曲がノート一杯になると、「よし、今こそリードさんに聞いて貰う時が来た! 10曲のうち1曲でも気にいって貰えれば」と思って彼のオフィスに向かったんだ。確か日曜日だったな。
 
そこには既に沢山アーティストが来ていた。みんながリードさんにアピールしている間待っていると「コティンのリトル・ブラザー、お前の番だよ」と俺を呼ぶ声がした。そしてそう、確か5〜6曲だったかな? リードさんの前で歌ってみせたんだ。歌い終わった後、「コティンのリトル・ブラザー、今の曲は凄く良い曲なので気に入ったんだが、私のところには君よりも素晴らしいシンガー、モンティ・モリスやデリク・モーガン等がいる。だからその曲を彼らに歌わしてはくれないか?」と言われたんだ。その後、しばらくしてモンティがそれを録音し、「In & Out The Window」は瞬く間にチャート・インしたんだ。これが私の書いた曲で初めてNo.1となった曲だね。これをきっかけにリードさんは私が良いソング・ライターだと認めてくれたのだろう、私にもレコーディングする機会を与えてくれたんだ。その後、デリク・モーガンとのデュエットで人気があったパッツィーと録音した「When You Call My Name」がNo.1になり、同じ日に録音した「Rough & Tough」もNo.1になった。そして私はリードさんのお気に入りとなったんだ。こうしてこれらのヒット曲を生んだ62年は忘れられない年となったんだ。その頃に録音した曲には「Stranger Nocking At The Door」「Till My Dying Days」「We Are Rolling On」なんかもあったなぁ。No.1にはならなかったけど、サウンド・マンはパワー・プレイしてくれたっけ。その後は色んなプロデューサーと仕事をしたよ。サー・コクスン、レスリー・コング、サー・ジェイジェイ、ジョー・ギブス、プリンス・バスター、バニー・リー。バニー・リーはデンハム・タウンの学校で一緒だったから仲は良かった。正にブレジュリンさ。あと忘れてはいけないのは、リスペクトすべきジャマイカ唯一の女性プロデューサー、ミス・ソニア・ポッティンジャーだね。
 
※    ※    ※
 
当時はまだ駆け出しの新人だから自分の曲がリリースされると嬉しくて、兄貴分に当たる親戚のコティンがプレイするデューク・リードのサウンド・システム、トロージャンに遊びに行ったんだ。ある週末、リリースされたばかりの「Rough & Tough」にお客さんがどんな反応をするか凄く気になって、まだクルー以外は誰もいないフォレスター・ホールに行って座っていたんだ。確か夕方6時過ぎだったかな? 気になって家でじっとなんかしていられなかったんだよ(笑)。夜の10時を回り人も増えてきたんだけど、まだ私の曲はプレイされないんだ(当時は今と違い11〜12時頃がダンスのピークだったようである)。いい加減しびれを切らせて「今夜はかけてもらえないのかなあ…」と思ったんだけど、12時過ぎ、遂に「Rough & Tough」はプレイされたんだよ!
 
コティンが「Rough & Tough」に針を置くとスピーカーから当時にしてはややスローなスカのリディムが流れ始めた。その夜は5分程歩いた先のサクセス・クラブではコクスンがサウンドをプレイしていたし、そこから3ブロックほど離れたジュビリー・ガーデンではプリンス・バスターもダンスを開いていたんだけど、丁度そのタイミングでコクスンやバスターのダンスから大勢の客がフォレスター・ホールに流れてきたんだよ。それはまるでレモンを木からもいでカゴの中にわさわさ集めるかの様にあっという間にトロージャンのダンスは満員になったんだ!
 
コティンはあまりの反応の良さに曲が終わるとまた最初からプレイ・バック(カマゲン)を10回以上繰り返した。熱狂したみんなは私をストリートからダンスの中に入れてくれたよ。そのあまりの騒ぎの様子を見てリードさんは俺の頭にビ−ルを注ぐと俺を肩車してダンスに来ているみんなと祝福してくれたんだ(翌日の新聞グリーナーの一面を大きくストレンジャー・コールの顔写真が飾ったのだ)。
 
これが私の一番の思い出だ。「Rough & Tough」のビッグ・ヒットによって当時、女の子の間で流行したヘアー・スタイルの名前にもなったんだよ。その流行の広がりと同時にみんなが私の名前を覚えてくれたんだね。
 
あれから40年が経ち、キングストンのダンスから始まった私の歌も今や世界中で聞かれるようになった。そしてこの夏、初めて日本の土を踏む事にもなったんだ。ジャマイカン・ミュージックのパイオニアとして私のパフォーマンスを日本のファンの前でお見せ出来る事をJahに感謝するよ。Blessed Love.
 
『Bangarang: The Best Of Stranger Cole 1962-72』
Stranger Cole

[Trojan / TJDDD116]
「Rough & Tough」やGlad-stone Andersonとの「Just Like A River」、さらにPatsy Toddとの曲も収録した2枚組ベスト盤、全54曲入り。


『Rock A Shacka Vol.15 Queen Patsy & Stranger Cole "Fabulous Songs Of Miss Sonia Pottinger Vol.1"』
[Rock A Shacka / DBCD-015]
Sonia Pottingerの下、SEP / GayfeetにてStranger ColeとPatsyらが吹sき込んだ貴重な音源が満載。7/18リリース。



【Stranger Cole来日公演】
「Rock A Shacka presents「Stranger Cole with Dreamlets」"We Are Rolling On" Tour in Japan」
■7/26(木)渋谷クラブクアトロ
■7/30(月)大阪クラブクアトロ
■7/27(金)には「Fuji Rock Festival」にも出演!
[問]Drum & Bass/06-6211-1044

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