HIGHER MEDITATION / ANTHONY B
[MAXIMUM SOUND / GREENSLEEVES / GRELCD296]
スタイルはオリジナルながら、昔ながらのレゲエ特有のレベル・ミュージックのイメージをキープしつつ、イナタさとファンキーな感覚を持つAnthony B。プロデュースは前回のグリーンスリーブスからの作品と同じくマキシマム・サウンドが制作で、洒落た音使いが彼の持つ味と実に良い相性です。見事にモダンでハイセンスな仕上がりの中にもレゲエの伝統がしっかり感じられる作品になっております。[輸入盤](鎌田和美)
 
THE ENERGY GOD / ELEPHANT MAN
[GREENSLEEVES / GRELCD605]
UKのグリーンスリーブスが今年30周年を迎え、その企画シリーズの一つ、ベスト盤企画の一発目はこのお方です。丁度ブレイク直前から大ブレイクにかけての時期の音源が中心になっているので、ぶっ飛ばされそうな勢いに溢れる正にベスト・セレクションです。もはや説明不要の存在ですが、彼がグリーンスリーブスでリリースした3枚のアルバムには未収録の大ヒット曲も入っているので要チェックですね。[輸入盤](鎌田和美)
 
MEDICINE MAN / RAS MICHAEL JUNIOR
[MAKASOUND / IDYCD6]
アコ−スティック・セッション人気シリーズ最新作。今回はラス・マイケルの息子が登場。ナイヤビンギを感じさせる楽曲が中心。ただしブルース、フォークに接近したアプローチは新鮮です。冴え渡るギター、ジュニアの渋い声、1曲たりとも聴き逃せません。やっている事自体は新しくないけれど、考え方が斬新。Inna De Yardの6作目、ますます面白くなってきてますね。木のレゲエ、いいなあ。[輸入盤](磯野カツオ)
 
INNOVATION / CHARLIE HUNTER, CHINNA SMITH, ERNEST RANGLIN
[BHM PRODUCTIONS / BHM1017-2]
ギタリスト三人衆、夢のコラボレーション作品。ReggaeとJazzの結びつきはとても深い。違う個性を持った三本のギターから爪弾かれる音が混ざると穏やかだった景色が一変する。木と木の擦れ合いで湯気が立ちこめるのだ。三人に共通している部分、それは卓越した技術プラス冒険心。伝統を感じさせつつも一歩、また一歩リード、彼らのコード進行は無限。タイトルに偽りなし、弾む音楽を知りたいでしょ?[輸入盤](磯野カツオ)
 
BASS MATTERS / RADIKAL DUB KOLEKTIV
[UNIVERSAL EGG / WWCD-043]
ザイオン・トレインのレーベルよりリリース。キーワードはライヴ、現場で聴いているような臨場感と疾走するダブに歓喜。目に見えない形でパンク・ロック、トランス、アンビエント等の要素が気の高まりを知らせている。刺激潜む所へ向かってベース・ラインは突き進むんだなあ。ルーツ・ラディックスの凄さを再び感じる私は、「バンド・サウンド最高」と声を大にして言いたい。走るダブ、いかが?[輸入盤](磯野カツオ)
 
CLASSIC CUTS1978-1984 / WAILING SOULS
[GREENSLEEVES / GRELCD604]
60年代末から活動を続けている名コーラス・グループ、ウエイリング・ソウルズが70年代後半から80年代にかけてリリースした12"ヴァージョンをコンパイルしたアルバム。グリーンスリーヴス12"シリーズの第一弾としてリリースされた「War」や80年代の代表曲「キングダム・ライズ・キングダム・フォール」等、名曲ばかり。近年、発泡酒のCMで話題になった彼らだが、やはりこの頃がピークだろう。[輸入盤](小池信一)
 
ENGLISHMAN / BARRINGTON LEVY
[GREENSLEEVES / GREWCD9]
バーリントンといえば、80年代半ばから90年代前半にかけてダンスホール・シンガーとして活躍していた頃の印象が強いが、79年にはこんなルーツな作品もリリースしている。プリンス・ジャミーとサイエンティストがエンジニアを担当し、バックはルーツ・ラディックスと当時の人気プロダクションがしっかりバックアップ。歌い方にまだ青臭さは残るものの、独特の節回しは既に本作で聴く事ができる。[輸入盤](小池信一)
 
ノー・スキン・アップ/キース・ハドソン&ザ・ソウル・シンジケート
[ビート/BRPS53]
ここ数年、様々なレーベルからレア音源がリリースされまくっているシンガー兼プロデューサー、キース・ハドソン。プレッシャー・サウンドからの第三弾はソウル・シンジケートをバックに従えた激レア・ダブ。プレス枚数も少なく、発売当時は無地ジャケにスタンプのみというチープな体裁でリリースされていたというシロモノ。シンプルなミックスではあるが、名作「ピック・ア・ダブ」に通じる奥深さを感じる。(小池信一)
 
ゴーイング・フォー・ブローク/チャプター11
[ポニーキャニオン/PCCY80033]
サブライムやスヌープを生み出したロング・ビーチという人種のるつぼの街ならではのレゲエとヒップホップのリズムを核とするミクスチャー・バンドのセカンド・アルバム。DJスタイルとラップ、そして時々飛び出す甘いメロディを巧みにミックスする3MCの魅力はもちろん、打ち込みと生楽器が融合したトラックが生み出すグルーヴ感がいい。前作同様ゲスト参加のティム・ウーのプレイもかなり効果的。(大場俊明)
 
マッシヴB・プレゼンツ・ビッグ・チューンズ/V.A.
[ファイブマン・アーミー/POCE-15502]
NYダンスホールの牽引者=ボビー・コンダース率いるマッシヴBのショウケース。今回はヤビーU「Warning The Nation」のリメイク・リディム“Jah Love”と現場ではお馴染みの押せ押せリディム“March Out”を核としたもの。当然前者にはカルチャー系アーティストを配し(キング・コングの名も)、後者にはバッドマン系DJがズラリと並ぶ(当然ブロ・バントンも参加)。貴重な映像も3曲収められている。(大場俊明)
 
ヘモ+ムーファイヤー・プレゼンツ・マーダ/V.A.
[エスケープ2ダンスホール/BACD-006]
ヘモ+ムーファイヤーが放つ第5弾リディム“Murda"の1ウェイ・アルバム。疾走感溢れるど真ん中のダンスホール・チューンが今回も揃ってます。現場でヒット中の最強ダンス・チューン「Wacky Jackson」をはじめ、フリスコ・キッドやヴァイブス全開ファイヤー・リンクス、日本からはおなじみランキン・タクシーやロミー、トリニダードからファイヤーマン、ブンジー・ギャーリンが参加。とにかく踊れます。(柳原いづみ)
 
リディム・アップ・カルチャーVOL.3〜ロンリー/V.A.
[ダイアモンド・エッジ/XQAT-1004]
良質なアーバン・ルーツ・レゲエ作品を紹介し続ける新興レーベル、ダイアモンド・エッジから届いたワン・ウェイ・シリーズの第三弾。今回はRichie SpiceやWarrior Kingのヒット曲でも知られるCali BudレーベルのSheldom Stewartによる“Lonely”をピック・アップ。05年のリディムながらルーツ・マナーど真ん中の上質なリディムのためかいまだに人気のリズムだ。参加DJ&シンガーもこの手のオールスターそろい踏み。(大場俊明)
 
スウィート・エスケイプ/グウェン・ステファニー
[ユニバーサル/UICS-9055]
ソロ2作目。先行シングル「Wind It Up」を手掛けたネプチューンズとの一連の営みでは、彼女の奇天烈な存在感が際立つのみならず、彼らのミニマル性も進行、エイコンとのコラボ曲では予想だにしなかったポップ・モードで成功裡に。かと思いきや、同僚トニー・カナルが提供するUKポップの進化形ではそのキャラを伸び伸びと表現しているワケで、彼女の“先鋭との付き合い方”みたいなものが確認できた次第。(石澤伸行)
 
グレイトフル/ココ
[Pヴァイン/PVCP-8247]
SWV解散後、ソロで「Sunshine」をヒットさせた歌姫による7年ぶりの新作。ウォ−リン・キャンベルによるイマ仕様曲では、相変わらずのパワフルな歌声をハジケさせ、シェップ・クロフォードらがゴスペル的なアプローチを伴ったミッド〜スロウでは、歌への表情付けで惹き付ける。特にフェイス・エヴァンス、ファンテイジア、リル・モらを招いた、クラーク・シスターズ曲のカヴァーでの喉ワザの応酬は圧巻!(石澤伸行)
 
シンキング・オブ・ユー/ヴィクター・フィールズ
[Pヴァイン/PCD-23882]
カシーフのプロデュースでデビューを果たし、インディ・ソウル界で高い評価を得てきた男性ヴォーカリストによる新作。ソウル・クラシックスのカヴァー集となった本作には、ジェフ・ローバーを始め名うてのプレイヤーが多数集結、ジャジーなアプローチでラグジュアリティを演出している。スムース・ジャズ・リスナーのみならず、ネオ・ソウルやフリー・ソウル・ファンにも訴求しそうな美味盤に仕上がっている。(石澤伸行)
 
ボーン&ライズド/ジョイ・デナラーニ
[ソニー/SICP-1197]
3年前にデビューしたアフリカン・ジャーマンによる2枚目。ドイツ拠点だった彼女は今回フィリー詣でを決め込み、ジェイムス・ポイザーらとの作業を展開。一方でノー・IDやルーペ・フィアスコらと共にシカゴ道を貫いたかと思えば、タイトル曲をヒップホップ・ソウル賛歌に仕上げたり、レイクオン曲を本人招聘の下カヴァーしたりと、その確かな歌ぢからとUSメインの流儀との交わりは、高い成果を上げている。(石澤伸行)
 
ファースト・プロトコル/トニー・レミー&ブルーイ
[ポニーキャニオン/PCCY-01822]
インコグニートを弦で支えるギタリストふたりによるコラボ盤。全編がインスト曲で固められているが、ここに用意されたビートの躍動感やそれに呼応する爪弾きは極めて音楽的で、時に「歌うように」奏でられるふたりのプレイには相当惹き込まれる。特に、四つ打ちをバックに小気味良く泳ぐ弦の音色は、イマ考えられうるアーバニズムの極みとして、フロアでも機能しまくるに違いない。エッジィかつ豊穣なる一枚だ。(石澤伸行)
 
ボビー/O.S.T.
[ユニバーサル/UICD-6134]
ロバート・F・ケネディ=“ボビー”暗殺の舞台を描いた映画のサントラ。スモーキー・ロビンソン&ミラクルズ、シュープリームス、スティーヴィ・ワンダー、マーヴィン・ゲイらによる一連の60年代後半の楽曲が発するのは、あの時代を象徴する熱気。唯一収められた新曲である、メアリー・J・ブライジとアレサ・フランクリンのデュエットでの声の交歓も、当時のクラシック曲に違わぬ熱を伴って響いている。(石澤伸行)
 
WE ARE THE SHEPHERDS / OMFO
[ESSAY RECORDINGS / AY CD 12]
デビュー作でクラフトワークのカヴァー「Trans Balkan Express」を披露して一世を風靡した、ウクライナ発バルカン経由でドイツに着地したOMFOの2ndアルバム。ひと足先に同レーベルからYMOカヴァー・アルバム『Yellow Fever!』を発表しているセニョール・ココナッツ(アトム・ハート)が共同プロデュースに乗り出して、彼が得意とするルーツ音楽→打込み音楽への変換アイデアも同時に炸裂した強力盤。[輸入盤](飯島直樹)
 
ホエールズ・トゥ・ジュピター / ムーンフラワーズ
[エンジェルズ・エッグ / DDCA-5045]
“レベル・ミュージックの都”英国 ブリストルで独自の活動を行なってきたバンドのオリジナル・ファースト・アルバムが約15年の時を経て再発。サイケでプログレッシヴなロック・サウンドをベースに、彼の地ならではのレゲエやダブにパンク、更にはフォーク〜民族音楽……といった幅広すぎる要素が渾然一体となったオリジナル・ミュージックは、こんな状況の現代だからこそ多くの人に強く響くのではないだろうか。(飯島直樹)
 
文明と野蛮/ハミロ・ムソット
[ビーンズ / BNSCD-733]
活動範囲〜音楽的に国境を越えたアーティストが増える昨今、彼もそのうちの一人。ブラジル在住パーカッショニストでありながら、ビリンバウを筆頭に親指ピアノ、クイーカ、ヴォーカル、ギターを取り入れ、シーケンサーも駆使し、南米リズム重視のドラムンベースまでやってのけてしまう。ひと昔前なら西欧在住かと思ってしまうほど多彩な最新ジャンルを駆け巡るが、魅力はやはり血肉沸き立つ南米のリズムにあり。(飯島直樹)
 
エンター/djケンタロウ
[ビートインク / BRC-168]
DMCワールド・ファイナル・チャンピオンとして世界レベルで認められた、国境を越えた音センス、構成力、アイデア……即ちターンテーブリストとして磨き上げてきた才能を、音楽制作にシフトした新たな門出。Ninja Tune〜Big Dada所属アーティストの他、本作にゲスト参加し共に世界の舞台に進出する、MCハンガー(ガグル)、ハイファナ、リトル・テンポら日本人アーティストへの海外からの反響にも期待が募る。(飯島直樹)
 
サイクリング/ スーパー・スモーキィ・ソウル
[サーキュレイションズ/CIRC 001]
日本人3人組ユニットという事を忘れさせられてしまう、国籍のない音像にまず驚く。ユニット名通り、深く煙たく黒いソウルが音からあふれ出る。そこにジェイ・ディーからの影響を感じるのも否めないものの、彼らのパーソナルな感情や記憶=ソウルの部分はデトロイトとは勿論違う。思いをインストゥルメンタル・ミュージックに込める高い表現力、そこに単なるフォロワーに終わらないオリジナリティが垣間見える。(飯島直樹)
  
フォームス/ インナー・サイエンス
[スープ・ディスク/ soupCD026]
もし、繰り返し演りつくされた音楽スタイルに無感動になってしまった事があっても、もし、音楽に歌やラップ=言葉が加わっていなければやっぱりつまらないと思った事があっても、本作を聴いたら“音を聴く楽しさ”に立ち返ることができるだろう。時には歌うように、時には語りかけるように空気を賑わすインナー・サイエンスの音は、インストゥルメンタル・ビート・ミュージックらしからぬ雄弁さを持っている。(飯島直樹)